千葉支店 千葉市新庁舎整備工事作業所
県内最大の人口を誇る政令指定都市の千葉市。今ここで、高い耐震性と大空間の快適性を両立する当社独自のC.S.Beam構法を採用した新しい市庁舎の建設が佳境を迎えている。施工に邁進する作業所は、DXやウエルネス化に取り組み、先進的な職場環境を実現している。
Photographs by Seiya Kawamoto
災害対応の拠点となる新庁舎を
堅牢に、高精度に築く
千葉県の中心部にあたり、県内最大となる人口約97万人を有する政令指定都市千葉市。その新たな市庁舎を、当社JVは実施設計と施工を一括するデザインビルド方式で受注した。既存の市役所を稼働したまま、同じ敷地内に7階建ての低層棟と11階建ての高層棟から成る庁舎を建設中だ。
千葉港に近い緑豊かな港エリアと、活気あふれる商業エリアの中間に位置し、完成すれば2階部分で千葉都市モノレール市役所前駅とも接続。公共性と利便性に優れた、千葉市のランドマークとなる。
新庁舎のコンセプトは「まち・人・緑をつなぐシティホール」「政令指定都市の拠点にふさわしい機能を備えた庁舎」だ。松本実作業所長は、「基礎免震構造や非常用発電、災害用汚水槽などを設置し、地震や津波など、あらゆる災害に対する備えと事業継続性を強化した建物が生まれます。市民の安全と安心を守る市庁舎建設に、作業所一丸、誇りを持って取り組んでいます」と話す。
江原史晃設備次長も「庁舎機能の生命線ともいえる各種設備の据え付けでは何より堅牢なつくりを意識して施工を進めています」と力を込める。
建設中の「市民ヴォイド」
木のぬくもりを感じる
デザイン性に優れた内外装
新庁舎は市民が憩いや安らぎを感じられる、木のぬくもりを活かした意匠が特徴的だ。低層棟1、2階吹き抜けの「市民ヴォイド」や本会議場など、随所に木目調アルミルーバーや不燃木が用いられ、エントランス前の「まちかど広場」側には巨大な庇下に木製ルーバーを設置。各階外回りに木目調アルミプランターを巡らして植栽し、屋上緑化も施される。
「意匠性の高い低層棟の外装施工にあたっては、アルミサッシ、木目調アルミプランターなどの納まりの検討や色調の選定、確認のため、現場の一角にモックアップを設置。実際に数種類の植物を植えて、生育状態の確認もしました」と、松本所長は話す。
市役所業務に万が一でも支障を来さぬよう、毎週定例会議などで確認しながら密な連携を取り、安全対策・騒音対策に万全を期す。現市役所に面した仮囲いには防音パネルを設置。コンクリート打設の際には、ポンプ車、ミキサー車ともに建屋の中に入れ、騒音に配慮しながら作業を行う。記者発表やテレビ取材があるときには、作業を一時中断することもあるという。
柱と端部をRC、梁の中央部をS造とし、高耐久性を維持しながら軽量化を実現。構築されると柱の少ない大空間が可能に!
BIMとリアルの緻密な検証を経て
C.S.Beam構法で躯体を施工
躯体工事では、高層棟・低層棟ともに、当社独自のC.S.Beam構法を採用している。同構法は、柱を鉄筋コンクリート(RC)造、梁を鉄筋コンクリート(RC)造+鉄骨(S)造とする、当社オリジナルの混合構法だ。耐震性・耐火性・耐久性に優れるRC造と、軽量で、短工期にもつながるS造双方の利点を活かし、耐震性能を確保しながら、柱の数を減らして約16mもの長スパンの大空間を実現する。
C.S.Beam構法の施工手順は、現場の状況に応じて決められる。当現場は外部ヤードが狭く、鉄筋と鉄骨を地組みするスペースが確保できないため、工場で製造した鉄筋を搬入・揚重してから、その上に鉄骨梁を設置する分割方式を採用した。仕口部分に鉄筋を巻き付けて固定後、梁の端部と柱を同時にコンクリート打設する。
「資材を保管する場所も確保しづらいため、搬入された鉄筋・鉄骨はその日のうちにすぐ設置しなくてはなりません。その分、緻密な施工計画と工程管理が求められます」と、松本所長は話す。当作業所では、建築本部デジタルプロダクトセンターのサポートのもと、BIMモデルによる3D検証を徹底して行った。さらに、C.S.Beamの実物大モックアップを製作し、入念に施工手順を確認してから躯体工事に取りかかった。
根本健二副所長は、「同構法は、この現場では、所長以外ほとんど未経験。ですが、BIMに加え、モックアップで形状や重さをリアルに体感できたことで、所員も作業員も迷いなくスムーズに作業にかかることができました」と説明する。現在、躯体工事は11 階部分まで進んでおり、松本所長は「順調に工事が進んでいます」と胸を張る。
北欧調のインテリアを配した1階のリラックスコーナー「ホワイエ」
DX、ウエルネス、環境配慮
次々に新しい施策を実現
当作業所の特筆すべき点は、他の作業所にも水平展開できそうな、先進的な職場環境づくりに率先して取り組んでいることだ。まず挙げられるのが、DXによる作業所のスマート化。「ウエルネス化もその一つ」と、松本所長は紹介する。作業の負担軽減や生産性向上、心身の健康増進などを目的としたウエルネス作業所。その全国で3番目のモデル現場として稼働し、「居心地のいいホワイエなどを設け、時にリラックスしながら快適に仕事ができる環境を整えています」。
また、作業所の事務所棟は断熱強化、全館LED化、高効率な空調や給湯設備の導入など環境配慮を徹底し、省エネルギー性能指標0.44(56%削減)を達成し、ZEB Ready※認証を取得している。
けんせつ小町活動の取り組み「港KOMACHIBA」も活発に展開中だ。メンバーは隔週で会議を開き、グリーンカーテンやマイカップ運動、エコバッグ製作・配布など、SDGsに関わる活動を行う。松本所長が掲げるモットー「市民に開かれた作業所」を体現するため、その活動内容は、作業所のウェブサイトで詳しく紹介されている。サイトでは、新庁舎工事で用いられる構工法や技術を解説する「千葉市新庁舎整備工事かわら版」も定期的にリリース。若手社員が中心となって、難しい専門用語を使わず、市民向けの分かりやすい解説記事を執筆する。
- ※再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量削減を実現している建物のこと
DXで日常業務をスマート化。
事務所の壁面をインフォメーションスクリーンに!
事務所開設と同時に、壁面をインフォメーションスクリーンにするなど、DXによる作業所のスマート化を実施。スクリーンには、当日の作業計画・搬入予定などの情報や、場内カメラ複数台の映像を常時投影している。作業所の業務全体を全員が一目で把握できるため、情報共有が“深化”し、安全面や品質面での新たな気付きを促す。毎日10時半からの職長会議前に行う「工事プレ会議」では、スクリーンに映し出される情報を確認しながら、立ったまま、活発な意見交換を行う。修正すべき点はその場で訂正して、すぐさま情報共有。短時間で作業所の方向性を調整・確認でき、続く職長会議の進行もより円滑になった。従来、会議室で行っていた会議も、Teamsを用いて事務所内の自席で実施。会議室への行き来が不要となり、会議時間が短縮。DXが時短、生産性向上に大きく貢献している。
小さな変革を積み重ねて
大きな改革につなげていく
「若手が多い現場なので、彼らが活躍できる場をつくったり、相談や報告しやすい雰囲気を醸成することが大切」と松本所長。毎週金曜日の13時から、品質や安全、時短など多様な課題について、若手社員が自分で調べた内容を発表する時間を設け、自発的な学びの後押しをしている。
ユニークなのは、「名前の呼び捨て禁止」を徹底していることだ。入社1年目もベテラン社員も、互いに尊敬し合い、コミュニケーションを良好にしようとの発想だ。松本所長は、「一つひとつは小さな取り組みでも、まとまればきっと大きな改革になる」と微笑む。
庁舎建物は2023年1月末に引き渡し。その後、引っ越し、開庁、既存庁舎の解体、外構整備を経て全体完成の日を迎える。山口真一工事長は、「千葉市民の期待を集める新庁舎を、コロナ禍であっても、最後まで安全に施工していきます」と表情を引き締めた。
※撮影時のみマスクを外しました
(2022年4月28日取材)
DXは働き方を変える大きな改革につながります
佐藤光洋工事主任
スクリーンや通信デバイスなど、さまざまな既製品を組み合わせ、低コストで有効性の高いシステムを構築しました。インフォメーションスクリーンは、朝礼や会議になくてはならない存在になっており、自由に意見や疑問をやりとりしやすい雰囲気づくりにも一役買っています。
工事概要
工事名称 | 千葉市新庁舎整備工事 |
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発注者 |
千葉市 |
施工者 | 当社・鵜沢建設共同企業体 |
基本設計 | 久米設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体 |
実施設計 | 当社 |
工期 | 2020年5月15日~2025年1月31日 |
建物概要 | 建築面積8,324.13m2 延床面積51,204.16m2 地上11階・塔屋1階 |
構造 |
RC造+S造(基礎免震構造・CSビーム構造) |
所在地 |
千葉県千葉市 |