関西支店 (仮称)難波中二丁目開発計画のうちA敷地計画作業所

関西経済圏の活性化に貢献する商都大阪の新たなランドマーク!関西経済圏の活性化に貢献する商都大阪の新たなランドマーク!

関西の観光の玄関口大阪。その中心地の一つである難波で、約1haの土地を3分割し、ホテルやオフィスビルを設計・施工、運営する開発事業が展開されている。ハイエンド超高層ホテルとなるセンタラ グランドホテル大阪を建設中のA敷地計画作業所を訪ねた。

Photographs by Seiya Kawamoto

大阪の中心地、難波に
タイの高級ホテル1号を建設

 大阪〝ミナミ〞の中心地、難波駅を出て繁華街を南に向かうと、天空に向かってそびえる、ペンシル型の超高層タワーが目に飛び込んでくる。当社が進める新規開発事業「難波中二丁目開発計画」の一つ、A敷地に建設中の「センタラ グランドホテル大阪」である。タイのセンタラホテルズ&リゾーツと、当社、関電不動産開発(株)の3社が特定目的会社を設立。2023年7月、地上34階、客室数515のラグジュアリーホテルをオープンする。タイを中心に世界13カ国で事業展開するセンタラホテルズ&リゾーツの、日本第1号ホテルだ。

 難波地域は、道頓堀や心斎橋、通天閣といった国内外で人気を集める観光スポットに近く、関西国際空港やユニバーサル・スタジオ・ジャパン、神戸、奈良、京都へのアクセスも良好だ。森島克之作業所長は、「新しい大阪のランドマークをこの地に築いて、2025年、大阪・関西万博の開催を控える関西経済圏のビジネス、レジャー、インバウンドのさらなる活性化に貢献したい」と熱く語る。

センタラ グランドホテル大阪の完成イメージ。各種レストランやバンケット、会議室、スパ、フィットネスのほか、33階には大阪の夜景を一望できるルーフトップバーも設置

鉄骨建方

本社の各部署と細やかに
打ち合わせしながら施工

 本プロジェクトの敷地は、鉄道や既存商業施設、一般道路に囲まれている。基礎工事の杭打ち作業では、線路が近接するため南海電気鉄道(株)と安全対策、振動対策を図る協議を実施したが、着工早々コロナ禍による緊急事態宣言が発出され、協議そのものが休止した。

 吉田明弘工事課長は、「鉄道に隣接する高層部から始める予定だった杭打ちを、線路と離れた低層部からに変更するなど、遅れが出ないよう工夫し、協議再開後も本社の協力を得て慎重に工事を進めました」と振り返る。建物は高層で構造が極めて複雑なこともあり、基礎から躯体工事に至る工事全般において、本社各セクションの協力を仰ぎながら全社体制で課題解決に取り組んだ。

外観に用いるPCa版の種類は12種類。緻密に施工していった
外観に用いるPCa版の種類は12種類。緻密に施工していった
DPCの協力を得て、クレーン配置や鉄骨建方ステップを3D化し、細部を把握しながら施工(図はヘリポートを支えるため、33階ルーフトップバーおよびレストラン直上に配された鉄骨の様子)
DPCの協力を得て、クレーン配置や鉄骨建方ステップを3D化し、細部を把握しながら施工(図はヘリポートを支えるため、33階ルーフトップバーおよびレストラン直上に配された鉄骨の様子)

 無足場工法とS積層を組み合わせた躯体工事は特に難易度が高い。5階から31階の上層部は、鉄骨、デッキプレート、外装のプレキャストコンクリート(PCa)版の設置、コンクリート打設の順で施工を進めるが、陰影ある外観を特徴付けるPCa版は1フロア60ピース、総数にしておよそ1800ピースにも及ぶ。約1年間の基礎工事の間に、建築本部デジタルプロダクトセンター(DPC)とタッグを組んで、タワークレーンの配置から鉄骨建方まで、全て細かく3D化し、緻密な施工計画を立案。若手社員や作業員が建物の構造を把握し、安全かつ効率的に施工できる体制を整え、躯体工事へと臨んだ。

PCa版設置の様子
PCa版設置の様子

 「施工面積から考えるとタワークレーンは1台が妥当ですが、PCa版の数が非常に多かったので、建築エリアを2つに分け、2台のタワークレーンで、2方向から効率よく揚重することにしました」と、吉田課長は説明する。タワークレーンの配置と稼働に関しても、本社の技術部門と入念な打ち合わせを繰り返した。

64台取り付けた、コア部鉛直方向オイルダンパー

画期的な制振フレームを
試行錯誤して高精度に施工

 躯体工事に加えて、制振計画もチャレンジングだった。ペンシル型の高層建築の場合、地震や強風による揺れを吸収する制振システムが不可欠で、制振用のオイルダンパーは、通常横向きに設置される。この工事では、低層5階部分のダンパーは建物外周に横向きに設置されたが、高層部については、総数64台のオイルダンパーが、建物中央部に縦置きされた。日本でも極めてまれな「コア部鉛直方向オイルダンパー」だ。

 吉田課長は、「この方式だと、ホテル外観の意匠や内側からの眺望をダンパーが損ねることなく、しかも高い効率で揺れを減衰させることが可能です」と説明する。課題は、この優れた制振計画をいかにして誤差なく施工するか、である。制振性を高めるべく、フレーム全体は、上部、下部ともに床から離れ、中空を浮かんでいるように設計されている。ところが、床から浮いたままでは、正確な位置にダンパーを組み込むことが難しい。

3D化したダンパー部分。制振性能を高めるため、床と制振フレームの間に空間がある

 「いったん、L型の金具とボルトでフレームを仮止めしてからダンパーを配置し、その後、金具を外す施工方法に決定しました」と、吉田課長。本社の構造設計と協議を重ねながら、何度も試行錯誤して出した結論である。

若手や女性が多く、現場は活気にあふれる。

  • 撮影時のみマスクを外しました

若手と女性が多い作業所で
ワーク・ライフ・バランスを実現

 この現場は、作業所内に若手社員が非常に多い。森島所長は、「学ぶ意欲も吸収力もある若手のモチベーションを高めることは大切な仕事の一つ」と強調する。「建築本部作業所業務推進センター(CSPC)に集約可能な業務を代行してもらい、作業所業務の効率化を図っています。若手がデスクワークで手一杯にならず、余裕を持ってコア業務に取り組めば、その分先輩や現場からより多くを学び、知識と経験を蓄えることができます」と話す。

 所内の女性比率も高く、派遣社員を含めると約5割に達している。
「ワーク・ライフ・バランスを推進するため、性別を問わず、育児休暇・休業を積極的に取得できるよう、みんなで協力し合っています」と森島所長。「この現場に配属されてからすでに4人の赤ちゃんが生まれています」と、頬を緩める。

 大学生のインターンシップ受け入れにも積極的で、この日も女子大学生が、取材陣とともに現場を見学しながら、施工方法や技術面の説明に熱心に聞き入っていた。
作業所のモットーは、「明るく楽しむ」だという。確かに所内は、若々しい活気と笑顔にあふれている。

オール大成で挑む大阪難波の都市開発

 「難波中二丁目開発計画」は、大倉喜八郎翁創業の(株)ニッピが所有する土地を、A、B、Cの3敷地に分割し、それぞれ長期間貸借して開発を行うプロジェクトだ。B敷地は南海電気鉄道(株)が主体となってオフィスビルを開発、C敷地は、A敷地同様、当社が事業者となって「ホテル京阪なんば グランデ」を誘致した。3 敷地全て当社が設計・施工を担い、都市開発、設計、営業、現場の各セクションが専門性を発揮して、オール大成でこのプロジェクトにチャレンジ。難波の街の賑わい創出、関西経済圏全体のさらなる活性化を目指している。現在、森島所長が3 敷地全体の統括所長を務め、定期的にミーティングや情報交換を行い、搬入ルートや機材を融通し合うなど、3敷地一体となって効率的かつ安全に開発、施工を進めている。完成後は2階部分のペデストリアンデッキで3 棟のビルが連結され、訪れる人たちが自由に回遊しながら新しい街並みを楽しめるようになる。なお、本案件の受注は、今年度の社長賞を受賞した。

日本初進出の高級ホテルを
総合的に演出する

 本プロジェクトで、当社は都市開発、設計施工だけでなく、家具、什器、備品類の提案から発注、納品、設置までを一貫して行うFFEを請け負っている。センタラホテルグループ共通の食器やマット以外のほとんど、音響設備や厨房機器に至る約5000種類、2万点に及ぶ備品類を調達する、極めて大規模なFFEだ。その総指揮を執る大濱光博専任部長は、センタラホテルズ&リゾーツが本拠を置くバンコクで、大成タイランドの社長職を務めた後、この現場に配属された。タイ語での対応はもちろん、得意の英語や中国語を活かして、ニューヨークの設計会社や中国の家具メーカーとやりとりし、着々とFFE業務を推進中だ。

 「これほど大きなFFEは当社として初めての挑戦。上海やドイツ、ノルウェーなどから高級な家具・備品類を調達し、ラグジュアリーホテルにふさわしいイメージを演出できるよう力を尽くします」と大濱部長は力を込める。

  • Furniture=家具、Fixture=什器、Equipment=備品

 現在、現場では内装工事が着々と進んでいる。この後、難波駅側と2階メインエントランスをつなぐペデストリアンデッキの拡張工事や、街の賑わいを創出する、緑豊かな外構の工事などが控えている。

 「FFEを含めて、ここで培った実績と信頼、オール大成で取り組んだ経験を、若手にはしっかり次につないでほしい」と力強く語る森島所長。ホテルが完成した後も、当社は特定目的会社の一員としてその運営に携わる。「美しいホテルを、最後まで安全に建てることが私たちの使命」と微笑む森島所長の眼差しの先には、国内外の多くの人で賑わうホテルのラウンジが見えているに違いない。

※撮影時のみマスクを外しました

(2022年8月29日取材)

Voice ~現場のために今できることを~

何度も試験を繰り返し新しい工法にチャレンジ

弘瀬晶人 工事主任

工務全般のほか、低層階のタイル施工を担当しました。採用したのは、外壁とタイルの凹凸を組み合わせて固着し、接着剤で安定させる「タイルハンギング」という珍しい工法です。関西支店初の試みなので、引張強度試験を何度も繰り返し、万全を期して施工に至りました。安全、コスト、メンテナンス性に優れた工法です。私にとってもとても良い経験になりました。


Voice ~現場のために今できることを~

難しい施工だからこそ得られる喜びと満足感!

佐藤 大 工事主任

鉄骨建方は初めての経験です。初めて尽くしのこの現場で一番やりがいを感じたのは、ヘリポートを支える鉄骨の建方。全面ガラス張りのルーフトップバー直上にヘリポートを施工するため、足場を組んで鉄骨を組み上げました。鉄骨配置が複雑なので、わずかな誤差でも建て入れ直しが必要になります。最後の鉄骨を建てあげたときは、本当にうれしかったです。


ヘリポートを支える鉄骨建方の様子
タイルを押出成形セメント板のリブに引っ掛けて、物理的に固着する「ハンギングシステム工法」

工事概要

工事名称 (仮称)難波中二丁目開発計画のうちA敷地計画
発注者

Centara Osaka特定目的会社

設計・監理 当社
施工者 当社
工期 2020年4月13日~2023年3月31
建築面積 3,580.5m2
延床面積 39,175.3m2
構造

S造

階数 地上34階・塔屋1階
最高高さ

141.6m

所在地

大阪府大阪市