中国支店 岡山市新庁舎整備事業庁舎建築工事作業所






竣工から半世紀以上の時を経た岡山市庁舎が新たに生まれ変わろうとしている。岡山城を模した難度の高い意匠を実現し、未来に引き継がれる新庁舎建設に邁進する作業所を訪ねた。
Photographs by Kawamoto Seiya
岡山市の未来につながる
ビッグプロジェクト
岡山駅東口から市役所筋を南方に約1km進んだ先に、建設中の岡山市役所の新庁舎がそびえる。取材で訪れた8月にはすでに鉄骨建方工事も完了し、大きな建物の骨格が目に見えるようになった。竣工まで残り1年を切り、盛夏を迎えた現場では、多くの作業員がきびきび動き、精力的に工事を進めている。
新庁舎の北側に隣接する現庁舎の誕生は1968年。50年以上が経過し、耐震性能や浸水のリスクが指摘されるほか、市内各地に分散した役所機能など、利便性の課題も抱えていたことから市民サービス向上に向けた業務効率化、防災機能の強化が急務となり、新庁舎新設が決定した。
工事を率いる藤田純作業所長は、本プロジェクトの意義をこう語る。「新庁舎は市政の中心であると同時に、市民の憩いの場として岡山市を象徴するランドマークとなる重要な建物です。災害発生時には災害対策本部が設置され、地域を守る機能も果たします。高い耐震性と、市民に愛される意匠性を兼ね備えた建物が求められ、それらを実現する当社の技術提案が評価されたと考えています」。
周辺には、住宅やマンション、公共施設などが密集するため、騒音・安全対策や近隣配慮を盛り込んだ施工管理計画も高く評価された。「ゲートの時間制限や粉塵対策、騒音振動計の設置などハード面の整備に加え、市担当者と毎週行う近隣への工事説明や職長会との周辺清掃など、地域に対し、最大限の配慮を心掛けています」と新谷信二副所長は説明する。
岡山市では基本構想の策定から市民に向けた情報発信など綿密に計画を立てて進めてきた。岡山市新庁舎整備課との連携役を担う十倉正年作業所長は、「岡山の未来につながるプロジェクトであり、市の思い入れの強さを感じています。隔週の定例会議では、工事の進捗報告に加え、市からの要望にも真摯に耳を傾けています。市民の皆さまや市役所で働く方々に末長く愛される、安心で快適な庁舎となるよう、全力で応えていきます」と力を込める。
精緻なモニタリングで
重層のはね出し庇を実現
新庁舎は高層棟と低層棟で構成される。低層棟がある北側は、屋上テラスから広場、そして公園へとつながり、市民のにぎわいを呼ぶ開かれた空間を形成する。


出典:岡山市ホームページ「外観イメージパース(2期竣工後)」
本工事の最大の難所となったのは、岡山城天守閣の重厚感を表現した高層棟8〜17 階の北側に重層するはね出し庇の鉄骨建方工事だ。
「最大10mあるはね出し庇を支える柱がないため、建物本体に鉄骨やスラブコンクリート、内外装仕上げ材の荷重が加わると、庇の重みで北側へ傾き、はね出し部分の先端も下がっていくことが予測されます。そこで、あらかじめ南側に柱の傾き、はね出し庇先端の持ち上げ量を適切に設け、躯体工事や仕上げ工事が進んで荷重が加わることで、竣工時に鉛直になり、はね出し部分も水平になるよう調整しました」と藤田所長は説明する。

この精度管理の要となったのが「施工時における変位推定モニタリングシステム」だ。建方開始の1年前から、技術センター都市基盤技術研究部、建築本部の技術部およびデジタルプロダクトセンター(DPC)とともに建方手順の検討と構造解析を繰り返し、周到に準備を重ねてきた。
「建方時の荷重によって、どの程度建物全体が変形するかを、代表点の測量のみを用いた施工時解析により、未測量の部位の変形量を逆解析で推定(施工時における変位推定モニタリングシステム)。南側への柱の傾き、はね出し部分全体の変形について精緻な算定を行いました。その上で、荷重や環境条件による傾きの変化をシミュレートし、各工程での建入れ精度管理値を決めました」と藤田所長は話す。
「解析作業と関係者との協議に時間をかけ、建方開始以降は、事前シミュレーションをもとに、定期的にモニタリングしながら安全かつ迅速に工事を進めてきました」と藤田所長は続ける。また、施工時のモニタリング結果を踏まえて工程を最適化し、工期短縮にもつながったと十倉所長は説明する。「当初の計画では、はね出し部分の鉄骨建方および本締め溶接の完了後に仮設撤去・スラブコンクリート打設へ移行する段取りでしたが、モニタリングで得られたデータを反映して工程の一部を前倒し・並行化。仮設撤去やスラブコンクリート打設をより早い段階で進められるようになり、結果として施工の迅速化につながりました」。
はね出し庇の鉄骨建方は今年2月に無事完了し、傾きの戻りは想定通りの経過をたどっている。今後、足場解体と竣工の際に再度モニタリングし、完成に至る予定だ。
解析と測定のプロがサポート
施工時における変位推定モニタリングシステム
高層棟のはね出し部分の精度管理を支えたのが、技術センターが開発した当社独自の「施工時における変位推定モニタリングシステム」だ。新国立競技場など大規模構造物で実績を重ね、岡山市新庁舎は5例目の適用となる。今回は、建築本部技術部とDPCが加わって、三者一体となってサポート。DPCが構造解析モデルを作成して、施工の各段階に合わせたステップ解析を行い、技術部が作業所と共に施工管理計画を確定。同システムで推定した変位や応力状態をもとに、現場は随時確認を行いながら精度高く施工を進めた(上図:はね出し庇の精度管理の流れ 参照)。こうした緻密な解析と高精度なモニタリングにより、品質確保に加えて工期短縮も可能となった。

災害時の機能確保を支える
中間免震とCFT柱
新庁舎は、災害発生時の災害対策拠点となるため、堅牢な構造が追求されている。水害に備えて主要設備機器は5階に設置。5階床下に免震装置を配し、免震層下部に制振ダンパーを配置する「ハイブリッド中間層免震構造」とした。免震装置は、鉄骨部材と直接接合するメタルタッチを採用している。

「メタルタッチは、コンクリートやグラウト材で接着させる必要がないため、工期短縮につながりますが、鉄骨建方の精度がそのまま免震装置に影響する難しさがあります。そのため、早い段階から製作図を決定し、ファブリケーターと綿密に協議し、鉄骨製作を進めてきました。また、現場でも建入れを厳密に行い、精度管理を徹底しました」と藤田所長は語る。
さらに耐火・耐震性の向上や鉄骨構造体のスリム化を図るため、角形鋼管内にコンクリートを充填するCFT造の柱とした。新谷副所長は、「本工事の柱は最長77mですが、1回で圧入できる量は20m分になります。コンクリート硬化スピードも早いため、120分以内に圧入を終えることを目標に工程を組み立て、毎回、迅速に作業を行いました」と話す。

心身ともに健全に働き
やりがいある現場をつくる
工事は2026年5月末の竣工に向けて予定通り順調に進んでいる。市民やメディアからの注目も日に日に高まり、関係者の視察や取材も増えてきた。「この先も近隣や市民の方にご理解・ご協力をいただきながら、事故・災害なく無事に竣工を迎える」ことが藤田所長の最大の目標だ。そのために、地域貢献はもとより〝心身ともに健全に働ける〟現場づくりに努めてきた。

例えば朝礼は、遅番勤務の社員や繁忙な社員が、自分の業務の進捗に合わせて参加できるよう3部制で実施している。ワーク・ライフ・バランスを重視し、定時上がりや休日取得も奨励。合理的でメリハリのある働き方を推進中だ。また、日頃の声掛けも大切にして、相談しやすい雰囲気を醸成している。「若手からベテランまで満遍なく揃っていますが、年齢や経験の垣根がなく、とても連携がいい」と新谷副所長は微笑む。
「未来を担う若手が頑張っている作業所です。大規模現場での多様な経験は大きな財産になります。仲間からたくさん学んで成長してほしい」と藤田、十倉両所長は口を揃える。
それぞれに与えられた使命を全うしていくことで、未来に引き継がれる建物は形になる。その日を目指して、作業所メンバーは邁進していく。
(2025年8月8日取材)
川原 大輝 工事係
盛重 侑伽(ゆうか)工事係
光岡 成斗(なると)工事係
工事概要
| 工事名称 | 岡山市新庁舎整備事業庁舎建築工事 |
|---|---|
| 発注者 |
岡山市 |
| 設計・監理 | 山下設計・丸川建築設計共同企業体 |
| 施工者 |
当社・ライフデザインカバヤ・重藤組特定建設工事共同企業体 |
| 工期 |
2022年12月16日~2026年5月29日 |
| 建築面積 |
約5,389m2 |
| 延床面積 | 約56,318m2 |
| 構造・階数 | S造(一部RC造・SRC造)・地上17階、地下2階、塔屋2階 |
| 所在地 | 岡山県岡山市 |


