カーボンニュートラル実現のための切り札
「CCS」をご存知ですか? その1

2023年4月1日

大幅なCO2削減が期待される新技術「CCS」

現在、全世界的に起こっている気候変動の大きな原因の一つが大気中のCO2濃度の上昇にあると言われている。2020年、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという、カーボンニュートラルを目指すことを宣言。現在、全世界も地球を守るためのこの難題に取り組んでいる。

このような背景の下、現在、カーボンニュートラルの切り札として「CCS」という新たな技術がにわかに注目されている。

経済産業省、環境省も、再生可能エネルギーの主力電源化を始めとするCO2の削減に取り組みつつ、CO2を回収し大気中に放出させない回収・有効利用・貯留「CCS」(Carbon dioxide Capture and Storage)の技術確立に取り組み「CCS」の技術を活用することで、大幅なCO2の削減を可能とするカーボンニュートラルな社会の実現が期待できる、と考えている。

「CCS」とはどんな技術か

「CCS」は、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれる。発電所や化学工場などから排出されたCO2をほかの気体から分離し回収し、地中深くに貯留・圧入する一連の技術を指す。

具体的に「CCS」では、CO2を地下800メートルより深くにある隙間の多い砂岩などからできている「貯留層」に貯留。貯留層は、CO2の漏洩を防ぐ泥岩などからできている「遮へい層」で覆われている必要がある。日本ではCO2を貯留できそうな場所が海域に多く、火力発電所などの大規模なCO2の排出源も沿岸部に多いため、海底下への貯留が適していると考えられている。そのため、CO2を船舶で輸送し、海底下に貯留する技術が必要になる。

2017年、経済産業省では、この「CCS」に使われる技術開発を支援し、2020年頃に、技術の実用化を目指すとした。

「CCS」の意義

「CCS」の導入によって、どのようCO2の大気中への放出を大幅に削減することが可能なのか。

環境省は、例えば約27万世帯分の電力を供給できる、出力80万kWの石炭火力発電所に「CCS」を導入すると、年間約340万トンのCO2が大気に放出されるのを防ぐことができるとしている。「CCS」は火力発電のほか、製鉄、セメント生産、ごみ焼却などのCO2を大量に出すあらゆる分野に導入可能という。

国が「CCS」の技術開発を推進

政府は、2050年にカーボンニュートラルを実現するに、現在の技術だけでなく、新しい技術が必要と考えており、成熟した技術をうまく使うと同時に、最新の技術を育てることが大切とし、それを受けて環境省では地球温暖化対策のために「CCS」が必要であるとの認識から、「CCS」技術の実証・検討、実際の貯留適地の調査、社会的な課題の検討などの取り組みを行っている。

その事業は、14機関から構成されるコンソーシアムが主体となり、環境影響に配慮しつつ、CO2回収技術の実証、CO2輸送・貯留技術の検討を行い、それらの結果を踏まえて日本に適した円滑な「CCS」導入手法を取りまとめることを目指している。

その中に、建設会社としてはただ一社、大成建設が参画している。実は、大成建設は「CCS」のトップランナーなのだ。