カーボンニュートラル実現のための切り札
「CCS」をご存知ですか? その2
-大成建設が牽引する「CCS」の真実-
2023年6月16日
その研究は2003年、カリフォルニアで始まった
2003年、大成建設技術センターの山本は、アメリカ・カリフォルニアのローレンス・バークレー国立研究所に留学していた。彼はそのラボで「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage二酸化炭素回収・貯留技術)の研究に没頭していた。2020年、政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという、カーボンニュートラルを目指すことを宣言する、その約20年も前の話だ。
大成建設、「CCS」解析のトップランナーに
「CCS」において重要なのは液体のCO2を地下に圧入するだけでなく、その後のCO2の挙動をきちんと把握して予測・管理することだ。長期的に、安定的に貯留するためにその重要度は測り知れない。CO2は地下水中に溶けるだけでなく、炭酸カルシウムに代表される炭酸塩鉱物に変化して地下に永久的に固定化される。この解析には膨大な演算が必要であった。そこで当時世界最速クラスであった我が国の地球シミュレーターなどの超並列スーパーコンピュータを使い、地中のCO2挙動を高速で数値解析する技術を開発。大成建設は解析技術のトップランナーとして認められ、建設会社としてはただ一社、さまざまな国のCCSプロジェクトに参画していくこととなった。
先んじた「CCS」の実績
国内では、二酸化炭素地中貯留技術研究組合を(公財)地球環境産業技術研究機構や(国研)産業技術総合研究所、4民間企業と共同設立し(2016年4月)、安全なCO2地中貯留の実現に向けた技術開発を進めるなど、我が国の「CCS」技術開発や実証プロジェクトの多くに関与し、実績を積み上げていく。「CCS」は回収から輸送、貯留までの一連のバリューチェーンであり、インフラ構築も必要である。環境省「環境配慮型CCUS一貫実証拠点・サプライチェーン構築事業(輸送・貯留等技術実証)」では、その一連のチェーンの実証を目指し、当社は貯留だけでなく船でのCO2輸送のための港湾設備設計などをクリーンエネルギー環境事業本部が土木本部と協力して進めていった。
「CCS」、政府主導のプロジェクトへ
遂に、時代が追いついた。経済産業省は2022年、二酸化炭素(CO2)を地中に閉じ込める脱炭素技術「CCS」に関し、2050年に年間1.2億~2.4億トンを貯留する方針を示し、CCS事業を30年までに始める政府目標を発表した。
CCSは政府主導のプロジェクトとなったのである。当社の研究開発がここで実を結び、土木営業の上田、戦略計画室の田邊の3人でCCSの事業化の取組を始め、そこにCCSプロジェクト推進チームの大井も加わっていく。「なんとかビジネスにしよう」というのが合言葉だった。
脱炭素時代のインフラへの貢献
2023年1月には大成建設、伊藤忠商事、三菱重工、INPEXと共同で船舶輸送を用いた大規模広域「CCS」バリューチェーン事業の実施可能性に関わる共同スタディ実施に関する覚書に調印した。
経済産業省は、今後「CCS」の民間事業化を進めていく方針であり、大成建設としても脱炭素社会を見据えた日本のインフラへの貢献として積極的に取り組んでいく考えだ。