育児・介護支援制度の拡充【その1】歴史と社会的背景
2025年7月31日
育児・介護休業法の歴史と成立背景
日本で「育児休業法」が施行されたのは1992年のこと。これは、男女共同参画社会の実現や少子化による労働力不足への危機感から、仕事と家庭の両立を支援する社会的な要請を受けたものであった。
その後の急速な高齢化社会の進展に伴い、介護が必要となる家庭が増加したことで、介護休業制度が新たに加わり、1995年に法律の名称が現在の「育児・介護休業法」に変更された。
これまでに、育児・介護と仕事の両立を加速させるため、「時間外労働の制限」「子の看護休暇」「1時間単位の休暇取得」「産後パパ育休」など、多様な制度が法改正で段階的に追加されている。
介護と2025年問題
介護支援における大きな節目として注目されるのが「2025年問題」である。「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となることで、医療や介護の需要が急増するとされる。この社会状況の変化は、企業においても介護休業取得者の増加をもたらし、仕事と介護を両立するワーキングケアラー(ビジネスケアラー)への支援が一層求められるようになった。
2025年4月に施行された育児・介護休業法の改正内容と改正背景
家族の介護や看護を理由とする離職者数は、一時的に減少傾向を示したものの、最近では約10万6千人にのぼっている。

※離職者には、前職が雇用者以外の者も含まれる。
さらに、生産年齢人口(15~64歳人口)は1995年のピーク時(8,716万人)から2024年には7,174万人に減少。2070年には総人口が9,000万人を下回り、65歳以上が人口に占める割合を示す高齢化率は39%の水準になると推計される。

こうした背景に加え、働く人の意識にも変化がみられる。男女ともに、仕事と育児を両立するため「柔軟な働き方」を希望する割合が増加。職場環境のさらなる整備が求められている。

※小学校4年生未満の子の育児を行いながら就労し、約10年以内に妊娠・出産・育児のために離職した経験のない労働者を対象としたアンケート調査
このような状況を受け、2025年4月から、男女ともに育児や介護と仕事を両立できるようさまざまな施策が実施されている。

大成建設のDE&I施策スタートのきっかけ
大成建設では、1992年の育児休業制度導入を契機に、結婚や出産後も女性が継続して働ける環境が整い、女性社員の活躍が増加。2006年には「ダイバーシティ」と「ワーク・ライフ・バランス」推進の強化を決定し、翌2007年に女性活躍推進室(現在の人財いきいき推進室)を設立。主に女性社員の管理職登用などを目指してきた。
そうした社内の取り組みや風土強化の一環で行った社内調査の結果、男女を問わず介護に対する不安を抱えている社員がいることがわかった。そこで、介護休暇の取り組みを強化し、介護と仕事の両立を支援することで、多くの社員の共感に繋がりワーク・ライフ・バランス推進を社内に浸透させることにつながった。これが、働きやすい職場づくりの第一歩となっている。
次回は、育児・介護休業法の改正に伴う大成建設独自の取り組みについて具体的に紹介する。